この度は『酸素タンクでCOVID-19感染者の命を救おう!』にご支援をいただき、誠にありがとうございました。
コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)では「ONE LOVE」プロジェクトからの送金手続きを待つ間に、ベンゲット州トゥブライ町に寄付する予定の酸素タンクの見積もりを、いくつかの業者から取りました。
なんと感染拡大が広がっているベンゲット州より、バギオ市内の業者のほうが30%ほど安いことが判明。ベンゲット州では感染拡大に伴う酸素タンクの不足に乗じて、不当な価格を提示する悪徳業者もいるとのことでした。
その結果、灯台下暗し!!
私たちのNGOの事務所のすぐ近くの建物にできている長い行列を疑問に思ったスタッフが「なんの行列ですか?」と聞いたところ、酸素タンクのリフィルだったのです!
「注文から3日でぴっかぴっかの新品を手配できます!」
ということで、そのKCALというご近所さんに発注することにしました。寄付する酸素タンクのサイズですが、ついつい大雑把な私は、
「大は小を兼ねるんじゃないの? いちばん大きいのでお願い!」
と言いたくなるのですが、やはりそこは寄贈先の町の事情を聞かねばです。
トゥブライ町の地域保健所スタッフによると、多くの感染者が自宅で療養していて、COVID-19の特徴で急に重症化して、保健所に救急要請が来るのだそうです。
日本みたいに救急車でお宅の前まで乗りつけて担架で運ぶってわけにいかないのが山岳地方です。多くの家が車が通れる道がないところに建っているのです。つまり登山道のような山道を歩いて救援に向かいます。
トゥブライ町では一番近い病院まで1時間はかかります。とりあえず命をつなぐための酸素タンクを、呼吸が困難になった自宅療養者のお宅まで運び、事態が深刻な場合は病院への搬送を行います。
しかし、大きなタンクを運ぶのは一人では無理で、最低二人の人員が必要だそうです(搬送を担当するのは町のDRRM=防災管理事務所スタッフ)。細く急な山道を重たいタンクを二人で運ぶのは至難の業。緊急時には一人で持ち運びできるポータブルサイズがいいのだそうです。そこで20Ibs(ポンド)というサイズをすすめられました。
人口2万もない小さなトゥブライ町。といっても8つの村があって、
「迅速な対応をするには、酸素タンクは村のホール(公民館みたいなものです)に備えた方がいいではないの?」
と、これまた知ったかぶりの提案をしてみました。
保健所スタッフによると、
「村に寄贈した場合、タンクの酸素のリフィルは村の予算でやることになります。町の保健所では保健所の酸素タンクのリフィルの費用をの予算から負担しています」。
なるほど。いつだって村は予算不足ですから、感染者が減ったら、リフィルしないで放置しそうですね。個人で酸素をリフィルできるような余裕のある人はごく限られているのが、山の村の現状です。症状が悪化してから、タンクを町に持って行って酸素をリフィルしてでは、間に合わないかもしれません。
やはりここは、町の唯一の医療機関である地域保健所にタンクを寄贈し、救急要請が来たらすぐに持っていける状況にしておいていただきたい!
ということで、20ポンド(9キロくらい)の酸素タンクとそれに取り付けるレギュレーター(調整器)を10セット購入し、11月24日、トゥブライ町に届けに行きました。
購入したタンクとレギュレーターを運び込んでます。
トゥブライ町役場ではラウロ町長が町長室に招き入れてくれ、トゥブライ町のCOVID-19の感染状況と保健所や防災管理事務所の活動について説明してくれました。
なんと現在、町にある酸素タンクは保健省から支給された酸素が半日も持たない小さなものが10本だけ。感染者が増えて一時はまったく足りなかったそうです。
町長は、「プロパンガスのタンクで代用していた」と言います(冗談好きの町長なので真偽のほどはわかりません。。。)。
こちらからは、SPINの代理人として、SPINとOne Loveプロジェクトについて簡単に説明しました。
20ポンドの酸素タンクとレギュレーターの寄付を伝えると、町長事務所のスタッフから「おおおおおっ」という声が。
酸素タンクを寄付することは事前に伝えていましたが、10セットという数が予想していたより多かったのかもしれません。トゥブライのような小さい町にとっては、One Loveにご寄付いただいた約21万円(9万ペソ強)も、町の予算では簡単に酸素タンク購入に充てることのできる金額ではないのです。
そのあと、車から酸素タンクを積み下ろして多くの人でごった返す保健所に運搬。保健所のスタッフ、警察、町長自らも運んでくれました。
その後、防災管理事務所、臨時ワクチン接種会場、伝統手織物の団体、農政課などを町長に案内していただきました。
CGNがプリントしていった「ONE LOVE」ポスターを持って、
「イヤマン(Iyaman=山岳民族の言葉でありがとう)」と言ってください。
という強引なお願いに、みなさん、心を込めてメッセージを送ってくれました。
ワクチン接種会場で多忙を極めるロペス医師も「イヤマン!」。
町役場に来ていたCGNのパートナーであるコーヒー農家の人たちも笑顔で「イヤマン!」。
その後、収穫状況を見に行ったほかのコーヒーを生産地の村でも、農家の人たちが緊張した面持ちで「イヤマン!」。
でも、誰よりも地域保健所スタッフの笑顔の「イヤマン!」が、心に残っています。
日々患者さんと接している医療スタッフにとって、この酸素タンクは命を救う素晴らしいちょっと早めのクリスマス・ギフトでした。
皆さんのお気持ちを確実にトゥブライ町の人たちに届けてきました。
One Love プロジェクトとサポートを必要としているトゥブライの人たちの橋渡しをさせていただき、CGNとして心より感謝いたします。
(なお、ビデオ撮影と編集はRainel、スチール撮影はKika、トゥブライまでのピックアップトラックでの運搬はArjenがボランティアで提供してくれました。イヤマン!)
【送金額】
213,000円→フィリピンペソでの受取額 91,442.13ペソ(2021/11/16 CGN銀行口座振り込み)
【支出報告】
20Ibs(ポンド)の酸素ボンベ 6,000ペソ×10本=60,000 ペソ
中身の酸素 500ペソx10本=5,000ペソ
医療用酸素レギュレーター 2,800ペソ×10個=28,000ペソ
合計 93,000ペソ
【不足額】
93,000―91,442.13 = 1557.87 ペソはCGNの自己資金で補充