活動報告書
【One Love Vol.9@ケニア編】
コロナ患者の早期発見に無償検査を行いたい!
PCR検査実施プロジェクト
協力団体: 株式会社 Connect Afya
PCR検査実施プロジェクト
協力団体: 株式会社 Connect Afya

◼ 皆様へ
プロジェクト実行者、株式会社 Connect Afya の嶋田庸一です。
この度、弊社株式会社 Connect Afya は A-GOAL プロジェクトが特定非営利活動法人 SPIN プロジェクトを通じて、弊社が実施しておりますケニアでの PCR 検査実施プロジェクトに対してご支援をいただきました。
皆様の温かいご支援により COVID-19 対策に向けた自社設備の増強とケニア保健省経由での無償検査の提供を行う体制を作りましたので、この場をお借りして中間のご報告と致します。
なお、正式な報告書につきましては、現在保健省を通じて提供予定の検査 500 件分が終了次第、それらの統計を付けたうえで皆様にお送りさせていただければと考えております。


◼ アフリカにおける感染状況(11/29 時点)
アフリカ全土における COVID-19 の感染者(陽性確認者)は 11/29 時点で約 210 万人、死者数は約 5.1 万人となっています。
グローバルでの陽性確認者の数が 6000 万人超になっていることを考慮すると、アフリカ地域のグローバル全体での感染者の比率としては大きくはないものの、過去 5 か月の間で感染者・死者数はともに 5 倍超となっています。

アフリカ全土における累積感染者数
(11/29 時点)

出典; Africa CDC

アフリカ各国の中で最も大きな感染者を有するのは南アフリカで、モロッコ、エジプト、エチオピアと続きます。
上位 10 か国が約 8 割強の累積患者数を占める状況となっています。

アフリカ各国の感染者数上位 16 か国における累積感染者数
(11/26 時点)

他地域と比較して医療体制が脆弱なアフリカ地域において、当初予想されていたような感染爆発が現在まで起こっていない理由については諸説あり、
1) そもそも検査の数が足りておらず、十分に患者・感染実態を反映できていない
2) 無症候性の患者の数が多く、実態 の把握が困難になっている
3) 何らかの抗体を有している人が一定数おり、感染拡大の防止に貢献している
などが主な論として挙がっているようです。
1)の説以外は十分なエビデンスに基づいた議論に至っているとは言い難く、推測の域を出ているとは言い難いものがあります。


◼ ケニアにおける COVID-19 感染状況(11/29 時点)
一方でケニアにおける状況に目を向けてみると、累積感染者(陽性判明者)は 11/29 の時点で 83,611 名、死者数 1,452 名と、前回の報告(6/30)時点の 6,366 名、死者数 148 名から大きく増える形となっています。

新規感染者の推移を見てみると、7 月に新規感染者が 1 人 500-1000 人ペースで広がりを見せたあと、一旦感染拡大の波は収まったものの、10 月から大きく増加する傾向にありました。
現在第二波の只中にある状況と言って良いでしょうが、11 月下旬から新規感染者の数は少し落ち着きを見せつつあります。

感染の増加に対応して、ケニア政府は様々な施策を実施しています。
下記はその例です。

✔️ 22 時から翌朝 4 時までの外出を禁止
✔️ 15 人を超える人数の集会を禁止
✔️ レストラン、バーなどの施設の営業は 21 時までとし、以降の営業は禁止
✔️ 屋外など公共の場でのマスクの着用義務。違反した場合は 20,000 ケニア・シリング(日本円で約 20000 円弱)の罰金
✔️ 学校の再開は現在のところ初等教育の最終学年である 8 年生、中等教育の最終学年である 4 年生に限定する(ケニアの教育制度は初等教育 8 年、中等教育 4 年、高等教育 4 年の 8-4-4 制)

現在のところ感染者が特定されているのはナイロビ、モンバサなどの都市部が中心ですが、各地方での感染者も以前より多く見られるようになってきました。
12 月のクリスマスシーズンに掛けてケニアでは都市部に住む多くの人々が移動を行うことが予想されますが、幅広い移動制限は現在のところかけられておらず、12 月以降に新規感染が収まるか、それとも一層拡大するかは注視が必要な状況です。
一方で収束までの数年間で死者数 10 万人に到達するとの一部の予測があったことを考慮すると、現時点でそうした最悪のシナリオには達していないように見受けられます。


◼ 人々の行動様式
人々の態度・行動様式にも変化が見られます。当初は政府が強力に夜間外出禁止令・移動制限を行っていたり、中国や欧米での死者数増加の様子がメディア等を通じて伝えられていたこともあり、人々の警戒もかなり強い状況ではありました。そうした動きも 7 月の外出・ 移動制限の緩和に伴い、緩みつつあるように感じます。
外国人やホワイトカラーはリモートでの仕事に対応できる一方、物理的な移動を伴ったり、対面での仕事をせざるを得ない人々にとっては外出なしでは仕事にならず、収入を得られずに飢えることを選ぶか感染のリスクを取るかという選択を迫られている側面も無視はできません。
写真はナイロビの中心街の現在の様子ですが、パンデミックのアナウンスメント前とほぼ変わらぬ人通りに戻っています。

出典: COVID-19 Forces Millennials In Kenya To Tighten Their Grip On Finances – Report By MARGARET NJUGUNAH

◼ 医療機関の状況
ケニアでは国内に ICU がわずか 518 台しかないとのレポートもあり、初の症例確認時から医療機関のリソースの逼迫が懸念されていました。
これに対してケニア政府や各病院は ICU ベッドや隔離病棟の設置に奔走していました。
一方で全ての確認された患者に対しては、政府は病院へ隔離する方針を取っていたものの、6 月に感染者拡大に対して方針を転換し、自宅療養を基本とする方針へと切替を行っています。
こうした方針転換にもかかわらず、7 月や 11 月の新規感染者拡大時には、ICU を備える病院でのベッドは満床となっていたようです。
医療機関内での院内感染や医療従事者に対する待遇も問題として顕在化しています。
7 月にはケニア国内最大の産婦人科病院内で医療従事者のクラスター感染が確認され、医療従事者間での不安を呼びました。

出典: 41 Health Workers Test Positive for Coronavirus in Kenyan Maternity Hospital
https://www.voanews.com/covid-19-pandemic/41-health-workers-test-positive coronavirus-kenyan-maternity-hospital

これまで COVID-19 の治療に当たっていた 10 名超の専門医が死亡していることもあり、医療従事者の中では、勤務先の医療機関に対して感染症に対する十分な防護措置が取られていないことを訴え、そうした防護措置も含めた待遇の改善を求める声が日増しに大きくなっています(Coronavirus: Kenya doctors' fury over Covid-19 deaths https://www.bbc.com/news/world-africa-54960146)。
特に公立病院においては、医療従事者の昇給停止や給与の支払い遅延の問題が長らく問題になっており、今回のパンデミックでの医療機関の対応をきっかけにストライキが頻発しています。写真はナイロビ市内にある Kenyatta National Hospital で 9 月に行なわれたストライキの様子です。

出典: KNH workers stage protest, slam SRC over failed salary review (https://citizen.digital/news/knh-workers-stage-protest-slam-src-over-failed-salary%20review-346028/)

◼ 検査体制と検査状況
パンデミック発生当初は検査を行う施設が一部の公的機関(Kenya Medical Research Institute (KEMRI)・National Influenza Centre (NIC))や Nairobi Hospital (私立の最大手病院)などの施設など、片手で数えるほど限られている状況でした。
こうした状況を踏まえて、Pathologist Lancet (検査施設をアフリカ全土で展開する南アフリカ資本の企業)を初めとした民間検査企業が検査実施に参入するとともに、公的機関側でもキャパシティの増大が図られ、検査キャパシティは 1 日 5000 件から 8000 件程度をコンスタントに行える程度にまで拡大しています。
公的機関経由での検査でも症状のある患者からの通報のあったケースを扱うのみならず、一部の地域住民や医療従事者などの感染リスクの高い方を集団検査するなどの動きが見られます。
しかしながら、試薬の調達用予算が尽きた時期が存在したり、欧米での感染拡大と検査実施数拡大に伴い、ケニア含むアフリカ地域での供給が枯渇するなどしてこの体制を持続的に維持・拡大できるかについては不安が残っている状況です。


◼ 自社の対応と現状のご報告
今回、弊社は、ケニアでの COVID-19 検査を提供できる体制をクラウドファンディングを通じて構築するべく、動きを進めて参りました。実施に関しては下記のタイムラインをご参照ください。

クラウドファンディング後のタイムライン
時期 活動内容
6 月 クラウドファンディング活動の実施・規制当局への働きかけ
7 月 機材購入・規制当局の監査実施
8 月 輸入機材到着・インストール・検査実施のための証明書取得
9 月 保健省との交渉・条件合意
10 月 保健省経由での検査実施

クラウドファンディングを通じて機器・試薬等の輸入準備を進めてキャパシティ拡大を進めるとともに、規制当局(Ministry of Health・National Influenza Centre・Kenya Medical Laboratory Technicians & Technologists Board(KMLTTB))との折衝を進めていた次第です。
当初折衝していた規制当局の担当者の変更、COVID-19 検査施設の承認プロセスの変更と、それによる検査施設としての証明書発行手続きのやり直しなどが長引き、6 月下旬には検査可能と言われていたものの、実際に規制当局から検査施設としての正式な証明書をいただくことができたのは 8 月まで待つ形となってしまいました。
また、当社の使用する COVID 19 検査用の試薬はイタリアから輸入しているのですが、証明書を取得した後も欧州や米国での検査需要の爆発的増加に伴い、検査に使用する試薬の大量調達に時間を有する形になり、当初クラウドファンディングにて掲げていた公的機関経由での無償検査の提供にまで時間を有する形となってしまいました。

ケニア保健省(Ministry of Health)から発行された証明書

クラウドファンディング開始当初、我々の直接のカウンターパートとしてやり取りをしていたのは、National Influenza Centre(NIC)というケニア保健省(Ministry of Health)内で感染症対策を行う部門でした。
この部門を通じて、我々の有する検査設備、検査結果の有効性の確認を依頼し、承認を 6 月下旬までに得ることができていました。
しかしながら、こうしたプロセスを終えた段階で、保健省内で臨床検査を行う施設の統括を行う Kenya Medical Laboratory Technicians & Technologists Board(KMLTTB)が改めて施設の監査を行うことになり、監査実施までに数週間を要することとなりました。
こうした監査を経た後に、施設のレイアウトに一部改修が必要となり、これらの工事を急遽実施したものの、その後再度監査が行われたのは 7 月末と時間を要することとなってしまいました。
こうした監査を経た後も、提出した書類の審査等に時間がかかり、正式な証明書が発行されるまでに 8 月までの 時間を有することになった次第です。
以上の結果を踏まえて、保健省 National Influenza Centre(NIC)を通じた検査実施体制について当局と協議を行ってきました。
こちらから提供できる検査数に限りがあること、現時点で基本的には政府主導の検査が回せていることを考慮し、試薬等の供給が途絶えた際の緊急時のバックアップとして検査を提供する形で合意し、現在に至ります。
10 月に約 50 検体分の検査の依頼を受け、検査を実施しました。


◼ 今回のプロジェクトの支援金の使途
今回 A-Goal プロジェクトへの支援金の一部を、上記のケニアでの PCR 検査実施プロジェクトに対してご支援をいただきました。
A-GOAL プロジェクトへのご支援いただいた皆様には、支援金の一部(57,628 円)を頂戴することになり、誠に有難うございました。
こちらの使途としては、A-GOAL プロジェクトの現地スタッフが COVID-19 様の症状を有した際に、検査を無償で行うためのプール資金として活用させていただいております。
幸い、現時点で症状を有する方が発生していない状況ですが、今後の状況に応じて適宜検査を実施させていただく予定です。
改めまして、この度は弊社の取組みに対して多大なご支援いただきましたこと、深く感謝申し上げます。
いただいたご支援を元に、上記取り組みに引き続き尽力していく所存ですので、どうぞ宜しくお願い申し上げます。

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